前回のエントリで,カードとデジタルツールの僕なりの分析を行いました. その分析を踏まえて,デジタル時代にどのような知的生産ツールが可能なのかを 考えてみました.
はっきり言って,カードはかなり優れたツールだという結論が前回で出ていると 思います.ですが,いまどきカードを買おうとは誰も思わない.かく言う 僕も,すばらしいとは思いつつ,買うところまでは至りません.その理由は, 「並び替えなどはPCでやるものだ」と思っているからではないでしょうか.
改めてカードの良い点・悪い点
カードの何よりもすばらしい点は,「どこでも持ち運べてかつすぐ書ける」でしょう. この点においてデジタルツールが追いつく余地は今のところありません. それは前述の通り,必ずバッテリとのトレードオフがあるため.従って, これを求めるとなると,カードもしくはそれに類するアナログツールに頼らざるを 得ないと思います.
ですが,これではデジタルへの接続が悪いです.カード一枚一枚をデジタル情報に するには,スキャンするか,手写しするかしかないのが現状です.これを解消する 全く新しいアナ・デジ中間のデバイスが登場すれば別ですが,僕にそんなものを 作る技術も頭も無いので,とりあえずこの方向は保留.今使えるものでどうするかを 考えていきましょう.
カードの問題点としては,カード切れの可能性があるということで,それを防ぐためには 適度に補充しなければならず,実はバッテリと同様と言うことも可能です.そこで, カードの特徴である「どこでも持ち運べてかつすぐ書ける」という特徴を いかにデジタルで再現するかを考えてみましょう.
カードに書く機能を,携帯電話のメール機能へ
当然ですが,モバイル端末を想定しなければなりません.持ち運びを考えれば ノートPCも可能ではありますが,座っての入力を強制するため十分ではありません. そう考えていくと,携帯電話はかなり重要な端末となることがわかってきます. バッテリの持ちも結構良いですし,立ったままでも入力できる入力デバイスを 備えています.さらにネットにも接続できます.しかも,基本的には電源をつけっぱなし なのですぐに使うこともできます.そこで,まずは携帯電話をフルに活かす手段を 考えていきましょう.
携帯電話を情報ツールとして利用するために重要なポイントは「すぐ使えること」と 「あとで整理ができること」でしょう.持ち運びに関しては最優秀の携帯電話ですが, すぐ使えるとなると別です.例えば,情報を整理できるアプリなどを起動してから 入力などとなると,それだけで面倒です.ですので,出来る限りソフトウェア的な インタフェースを簡素なものにすべきです.また,整理に関しては携帯電話の中で やろうとすると,どうしてもアプリに頼らざるを得ず,貧弱なものになってしまうでしょう.
そこで,「メール」というインタフェースに注目します.今の携帯電話はメールを 中心的な機能としていますし,皆さんも使い慣れているでしょうから, 入力インタフェースとしては十分だと思います.また,新規メールの起動は通常 かなり軽いでしょうから,「すぐ使えること」を達成できると思われます. したがって,「新規メールを起動して書く」という行為は,「カードを取り出して 書き込む」という行為をかなりの部分で代替しうると思われます.
携帯電話ならではの機能としてカメラがありますが,これも知的生産を助けてくれます. もし今目の前の様子を図として残しておきたいと思ったときに,アナログツールでは 自らの手で絵を描くしかないですが,カメラの付いた携帯電話ならばそれを 撮影するだけでOKです.絵心のない私の様な人にはうれしい機能ですね.
メールに書いたことをどのように整理するか
すると,あとの問題点は「あとで整理ができること」でしょう.これは梅棹さんが カードを選択した大きな理由であるので,注目していく必要があります. 例えばメールを送らずに端末にためておいて,アプリを使って整理するという 方法が(技術的に可能かは知りませんが)考えられます.ですが,これは 先述の様に,貧弱にならざるを得ません.携帯電話はメールを入力するには かなり洗練されたデバイスとなりつつありますが,それ以外のデジタルデバイスと しては,PCに相当見劣りします.そこで,カードの入力は携帯電話にまかせるとして, 整理の方をPCでやれないかを考えるのが筋でしょう.
そう考えると,またメールというインタフェースは優れていることがわかります. つまり端末外に簡単に「送信」することができます.こうして,インターネットを 通じて,どこにいても端末外に取り出してしまうことができるのです. これはカードには無い魅力でしょう.
ただ,問題はそれを「どこに」送るかです.例えば,整理用アカウントとしてのGmailに 送ってしまい,Gmailの機能を利用して整理するということも考えられるでしょう. しかし,基本的にメールクライアントというのは,受信メールを時系列で処理するように 作られていますので,そう簡単にはいかないでしょう,少なくとも現時点では.
デジタル時代の整理ツールの土台としてのTwitter
ここから先については僕はまだ明確な答えは出ていませんし,いくつか僕もがんばってみたい 部分でもあります.
現時点で私がおもしろいと思うのは,Twitterを利用した方法です.ここではTwitterの 説明は省略しますが,Twitterへのポストとして,まるでカードへ書くようなことを 送っている人は多数います.かく言う私も,道を歩いていて気になったことを Twitterに送るのは日常茶飯事です.その際に実は私の場合,メールを利用しています. 指定されたメールアドレスにメールを送ると,自動的に自分の発言として Twitterにポストしてくれる「tmitter」というサービスを使っています ので,普通にメールを書く要領で送れば,自動的にTwitterの一発言となっています.また, 携帯電話を使えない場面(例えば職場などw)でもPCからTwitterに書き込めば 良いですし,かなり入力の自由度は高いと思われます.
また,Twitterではその場で反応を得られるというよさもあります.記憶が薄れない うちに,補足情報などをもらえるとかなり助かります.僕はatalertというサービスで 自分向けの返信をこれまたメールで携帯に送るようにしています.携帯電話の メールはプッシュ受信するので,返信があったらすぐにわかります.
Twitterはカードとの比較でみても,かなり優秀な知的生産ツールであると思われます. カードの「1枚1項目」は,1ポストに1項目を守れば「1項目1パーマリンク」を 達成できます.パーマリンクはWeb2.0的世界ではとても重要な要素です. そのURLさえあれば誰でもいつでも同じ内容にアクセスできるため,あとで情報整理を するという観点からも重要であることがわかります.また,カードの面積という 制限は140文字の制限で達成されています.若干短すぎるきらいもありますが, ともかく文字数を制限されていることは知的生産において重要です.
デジタル時代の整理ツール案
あとは,情報整理の方法です.これはまだないと思います.カードのインタフェースの よさを損なわないで,デジタルな情報を整理する方法はきっとこれからの 課題になっていくと思います.ここでは,僕のない頭で妄想したものを紹介します.
Twitterによって仮想的なカードを形成することは可能でした.あとはそれの 並び替えや分類ができるかどうかです.この際に,カードの物理的なインタフェースの すばらしさをなんとかいいとこどりしたいものです.例えば机にカードを 広げてざっと見渡しながら分類するなどは,カードならではです.これをできる サービスはまだ存在しません.Twitterの1ポストをまるでカードの様に表示し, カードを手で操作して分類するような操作をできるサービスがあればいいのにと 僕はTwitterを使い始めた頃から思っています.自分は未熟なのでまだ作れません. 誰かやってもらえるととても楽しいと思います.
単純にポストをリスト表示するだけでは,分類の「視覚フィードバック」が ないために,使いにくくてダメです.フィードバックが得られるためには, 視覚的にポストがクラスタリングされていることを提示する必要があります. なので,いっそカードの様にしてくれるといいなと思っている次第です. もし写真をつけているポストであれば,カードに一緒にその画像を表示すると よいと思います.
分類に加えて,「繰る」操作ができるとカードのよさをさらに再現できます. つまり,同じようなクラスタのポストをざーっと見るときに,例えばiTunesの カバーフローの様な方法が使えると面白そうです.
まとめ
というわけで,カードの機能を「すぐカードを取り出して書き込める」と 「あとでそのまま整理ができる」に分けて考えてみました.前者に対しては 携帯電話のメール機能を利用することで,かなり代替できることがわかりましたが, 後者はまだ実現されていないと思います.僕はメールを一度Twitterを通すことで, パーマリンクをつけて制限を加えることで整理しやすくする土台はできたと 考えています.あとは,実際にそれらを駆使して整理できるような方法があれば よいのですが,まだ存在しないと思います.もしも便利なものがあるのなら 教えて頂きたいところです.
補足として…パッケージング化はしない方がいい
重要なポイントはこういったことをオールインワンでパッケージングするのは やめた方がいいと思います.梅棹さんは全く逆のことを言っていて,
びんせんや原稿用紙など,なにも特製品を注文でつくらせなくても, 市販品でまにあうだろうとおもわれるかもしれない.(中略)文房具類の メーカーは,自分のほうのつごうで,かってに製品をかえる.(中略) いつ生産中止をやられるかわからないのだ.
Amazon.co.jp: 知的生産の技術 (岩波新書): 梅棹 忠夫: 本 p. 76, 77
と言っていて,カードをはじめ知的生産に必要なツールは特注すべしと 言っています.しかし,これはアナログならば正解ですが,デジタルにおいては 不正解でしょう.もちろん,全てを自分ひとりでパッケージング化して メンテナンスできるならば正解かも知れないですが,少なくとも携帯電話は 無理です.カードや原稿用紙ならばかなりの人が作れるでしょうが, デジタルデバイスやサービスを全て作ることは現実的には不可能です.
そうすると,私がTwitterを提案したように,様々なサービスを組み合わせて 行く方法をとるしかないでしょう.だとすれば,いくらこの上でパッケージングをしても 所詮組み合わせにすぎないのですから,今使えるもので組んでいくしかない. 確かに梅棹さんが指摘するような危険性は孕んでいますが,ダメならダメなりに 違うサービスをまた組み合わせるということも考えられます.つまり,デジタル時代の 知的生産に「完成形」は存在しないのです.
もしもどうしても必要な部分があれば,そこだけ作っていくのが良い対応でしょう. そのときに,それらとつながるサービスもまた無くなる可能性があるということを 前提にして作っていくのが重要です.例えば他のサービスとのデータの やり取りに独自の方法を使おうなんていうのはナンセンスで,みんなが使っている 方法を使っていくのが正しいでしょう.今で言えば,XML系を使ったやり取りや, API経由のやり取りならば,多少何かが変わっても対応可能だと思います. もちろんこれは,自分のサービスがいずれなくなってしまうことも踏まえての ことでもあります.
結局,デジタル時代の知的生産を行うためには,少なくとも整理のツールは 絶対的に必要です.それがどのような形になるかはまだ僕にもわかりませんが (もしくはもう存在して僕がしらないだけなのかも知れませんが), 現状ではカードに書き込む部分は結構うまくできていると思います. あとはカードをどうやって操作するかということになります.僕の提案した アイデアは一つの例にすぎません.これからみんなで考えていくべき 部分なのかと思います.
最後に…とりあえず書くことはやった方がいい
ただ,デジタルのよい点は,あとでいくらでも過去の遺産を使えるということです. ですので,僕はいそいそとメールからTwitterに書き込むことを続けています. こうして項目にパーマリンクを与えておきさえすれば,いずれ優れた 整理ツールが出てきた時に利用できるわけです.アナログではハードに 強く依存しますが,デジタルはハードからは浮いています.ですので,みなさんも まずは記録することから始めると良いと思います.初期投資は何もいりません. お持ちの携帯電話から,メールを書くだけなのですから.
いずれにせよ,知的生産について基礎知識ではありますので,梅棹さんの本は 読まれた方がいいかと思います.特に,今まで知的生産に慣れ親しんでいない人は.
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