二次元のクリエイティビティ

タイトルだが,創造力=クリエイティビティには,2 つの軸があるのではないか,という意味であって, 断じて二次元美少女画像のクリエイティビティという話ではない.そこだけ要注意 w

クリエイティビティと非クリエイティビティ

僕は,すべての行為は「クリエイティビティ」か「非クリエイティビティ」に分類できると思っていた. ここで想定しているクリエイティビティとは,分かりやすく言えば,絵を描く能力であったり, 作曲する能力であったりといういわゆる芸術家の能力であり,他にも研究課題を見つける能力や 画期的な解決法をひらめく能力,果ては誰が相手であろうとも有意義な会話をできる様な コミュニケーション能力など,広く捉えたクリエイティビティのことだ.

一方,非クリエイティブとはその反対というか,ウェイトがそちらには置かれていない行為で, おそらく効率とか費用対効果とかがより重要なのだと思う.例えば,シュレッダーをいかに 速く使えるか,とか,事務的なメールをどれだけストレスなくこなすかとか,そういう感じ.

「情報デザイン」という観点からクリエイティビティを見つめ直す

で,ふと「情報デザイン」を考えていたときに思いついたのだけど,「クリエイティビティ」って 2 つの方向性があるんじゃないかという話.

「情報デザイン」とは,情報の「形」であったり「インタフェース」であったりを設計することで, 例えば,DB の設計なんかは分かりやすい例かもしれない.最近気づいたのは,Mac のアプリケーションが アイコン一つをコピーしたり削除したりするだけで,インストール・アンインストールができるという 機能は優れた情報デザインの好例だということ.あれは,実はアイコン=フォルダなのだけど, 普通に使っているとあれがフォルダであることは全く意識されない.アイコンをクリックすれば アプリは起動してしまう.実にエレガントな情報デザインだ.

情報デザインを意識してみると,さっき挙げた「クリエイティブ」な能力は「情報を創る」能力とも言える. 作曲であったら,ある楽曲という「情報」を創りだしている.コミュニケーション能力であったら, 人脈や人から得られる情報というメタな「情報」を創っている.

「情報を創る能力」と「情報をデザインする能力」

そう考えると,「情報を創る能力」と「情報をデザインする能力」って,どうも直交に近い様な 気がしてきた.少なくとも,全く同じ方向は向いていないと思う.そして,「情報を創る能力」には 当然クリエイティビティが必要だが,「情報デザイン」にもクリエイティビティが必要なのではないか.

「そんなの誰にでもできるよ」「誰が作っても大体同じだよ」という人がいるかも知れない. だが,本当にそうだろうか.Mac で実現しているあの方式は Windows にも Linux にもない. 同じ様に OS を考えていたはずなのに,ちがう方式ができている.DB の設計だってある程度手法はあっても, 人それぞれだし,上手い下手は確実に存在する.「情報そのもの」と違って,ある程度の普遍性というか, 人間一般を対象とした考察がより重要である点において,一見「情報デザイン」における クリエイティビティは軽く見られがち(誰でもできると思われがち)だが,その実そんなことはないし, 優れた「情報デザイン」は優れた「情報」をも生み出すきっかけになる.

情報デザインをもうちょっと見直していきたい

「情報デザイン」を単純にインタフェースと捉えてしまうと狭い話になってしまうが,それだけでは なく,情報の構造であったり,情報の時間軸であったり,そういうものまで含めてすべてを 扱うのであるとすれば,非常に高度な技術と考えられる.僕がいつも好きで考えている Emacs の 設定をどうやればスマートに同期できるか,といった環境設定なんかも,実は情報デザインの一部だ.

そして,先ほども述べた様に,優れた「情報」を創るためには,優れた「情報デザイン」は不可欠である. なぜならば「人間一人の持ち時間は限られている」からだ.僕は「情報を創る能力」に優れた人は, できる限りそっちに注力して欲しいと思うし,逆もまた然り.そして,それぞれの優れた成果物を 互いに利用しあうことができたら,もっともっと創造的な世界が待っていると思っている.

まだまだ「情報デザイン」が明に捉えられていることは少なく,経験則とか既得権益とか そういうものに流されてしまっている.そこにもっと「スーパーな個人の力」を取り込んでいかないと, この先,情報があふれる社会において人々の「情報を創る能力」が頭打ちになってしまうのでは ないかと思う今日この頃.

ちなみに,僕は完全に「情報デザイン」寄りの人間だと思う.いつか,Emacs の設定ファイルの 同期方法が学術論文として認められる様な世界がきますように w

  • syatin 08-12-18 (木) 0:56

    二次元で捉えるというのが面白いですね。

    「情報デザイン」は、ユーザビリティの概念に近いように受け取りました。(時間の概念などが入っているところも含めて)

    構造も「情報デザイン」に含めるとなると、「情報を創る」のは、プログラムでいう所の機能そのものでしょうか。その実装やインターフェースをどうするかは「情報デザイン」の方に任せる、と。

  • riywo 08-12-18 (木) 7:55

    > syatin さん

    「ユーザビリティ」は確かに近いですね.

    プログラムで考えてもわかるように,
    2 つのクリエイティビティは混ざりあっています.
    機能もデザインセンスがないと要らない機能ばかりになるし,
    実際の実装はいくら理想がすばらしくても,
    動くものが書けなければ意味がありません.
    実装の部分はむしろ「情報を創る」側に近いでしょう.

    きっと 2 つの方向を合わせた主成分方向みたいなのが
    本当に必要とされている「クリエイティビティ」
    なんだと思います.