逐次通訳で英語力アップしよう

先日行われた ServerlessDays Tokyo 2022 Virtual というイベントで、OpsBR でお手伝いしているMomento のセッションに逐次通訳として参加しました。久々の通訳だったのですが、改めて英語力を一段アップさせるのに通訳は良いなと感じたのでどうしてそう思うかをまとめてみます。

セッションについて

動画がこちらから見られます。Momento のサービス自体も非常に興味深いものなので、Software engineer の方はぜひ一度ご覧下さい。(埋め込みできないのでリンクのみ)

スライドはこちら:

どんなくらいの英語力?

通訳できるくらいだから、元々英語が得意なんでしょ?という風に思うかも知れません。今は得意というか普通に仕事でも使いますが、約 15 年前には一言もしゃべれないレベルでした。そこからある程度できるようになってから、逐次通訳を何度かやったおかげでさらに飛躍的に伸びたと感じてます。

  • 20 代前半: 海外経験なし、大学受験英語のみ。TOEIC 595 点
  • 20 代後半: 英会話教室等で TOEIC 785 点、アメリカに 1 年滞在
  • 30 代前半: 日本で Amazon に転職、逐次通訳を何度か経験
  • 30 代後半: カナダに移住、IELTS Overall 7.0 (全然高くない)

以前この辺についてまとめた記事はこちら。6 年も前ですね。。。その後、無事に技術力も向上してカナダで Software engineer やってるぞ、昔の自分!

ついでに、10 年前/20 代後半の恥ずかしい英語でのプレゼン動画を発見したので晒しておきます:

逐次通訳とは?

通訳とは、話し言葉の翻訳をリアルタイムでやることですが、大きくは同時通訳と逐次通訳があります。同時通訳は、主言語での会話を遮ることなく別のチャンネルでほぼ同時に副言語へと翻訳するものです。これは本当に特殊技能で、耳で英語を聴き続けながら、その少し前に話されたことを日本語に訳し続けるような感じです。同時通訳は 10 分くらいしか連続でできないそうで、今回の様な長めの講演であれば複数人で交代しながらやるそうです。すごい。。。僕にはとてもできません。。。

一方、逐次通訳は主言語の会話を逐次遮って翻訳をします。なので、数文を聴いてそれを即座に訳す、また次を聴いて訳す、の繰り返しです。聴くのと訳すのを同時にやる必要がないので、僕の様な通訳初心者でも何とかやれます。同時通訳と比べると 2 倍の時間がかかってしまうので、通訳なしで伝えられる量の半分しか伝えられないですが、通訳が 1 人でもそこそこ長時間できます。今回も 40 分程度を 1 人でやらせてもらいました。

これまでやってきた逐次通訳

日本の Amazon (AWS) で Solutions Architect という仕事を 3 年ほどしていましたが、その中で英語圏のサービス開発チームと、日本語圏のお客さんを引き合わせることが度々ありました。これは、双方にメリットがあって、開発チームへの直接のフィードバックもできるし、課題に感じているところを開発チームにしか分からないレベルで議論もできるし、絶賛開発中の新機能についての話なんかもできます。ただ、日本語圏のお客さんの場合、英語でのミーティングに慣れていなかったり、やったことがないということが多く、その場合には逐次通訳を入れていました。

通常はビジネス系の同僚で英語がもっとできる人に通訳してもらったり、通訳の専門家の方を雇うのですが、特に技術的に突っ込んだ話題をするミーティングの場合には、その技術について分かっている人が通訳をしてしまった方が手っ取り早いケースも多く、部分的に通訳してしまったりしているうちに、次のミーティングは全部通訳よろしく、みたいな感じになっていきました。時には、技術分野的には自分もそこまで詳しくはないものでも、通訳として参加することになったりもしました。他にも、英語話者が日本で講演をすることになって、通訳が足りないので講演の逐次通訳(今回と同じ)をやることも何度かありました。

ちなみに、Solutions Architect の職務内容に通訳は別に入ってないんですが、僕は英語力を伸ばしたかったのと開発チームと仕事がしたかったので、機会があれば拾っていくようにしてました。1

逐次通訳の利点 1: 会話内容を考えなくてよく、言語の変換に集中できる

英語のスキルアップという意味で逐次通訳が何より優れているのは、話されるコンテンツの中身を自分で考える必要が一切なく、英語と日本語の高速な翻訳に注力できる点です。例えば、よくある英会話教室であれば、相手の質問を聴きそれに対する答えを考えて英語で答えたりするわけですが、僕なんかはそもそも質問に対する答えを考えることが日本語でも苦痛だったりします。「週末はどうだった?」「(知らんがな。。。)」的な。それが通訳の場合には、コンテンツの生成を双方勝手にやってくれるわけです。通訳者としては、入ってくるものを数秒脳内に貯めて即座に翻訳する、を永遠と繰り返せるので、まさに純粋な翻訳に脳みそのすべてを使えます。

さらに付け加えると、Software Engineer にとって software に関する話題はすでによく知ってる話だったりするわけです。AWS の時には紹介するサービスの内容も、開発チームからプライベートに開示できる内容も、お客さんのユースケースや抱えている課題も、全て知ってる状態で通訳するので、場合によってはお客さんの質問に対して開発チームが答える内容を、訳すまでもなく答えられることもありました。こういった状況での逐次通訳は本当に言語の変換に注力できます。

逐次通訳の利点 2: 聴くと話すの両方が効率よく鍛えられる

英語の会話のスキルでは、リスニングとスピーキングの得意不得意が人によってあると思います。僕の場合は聴く方は得意なんですが、話す方が苦手です。逐次通訳、特に、講演のような一方通行ではなく、ミーティングでの双方向の通訳をする場合には、強制的に両方のスキルを鍛えられます。開発チームが英語を話すのを訳す時には高速に聴きとる必要があるし、お客さんが日本語で質問をするときにはそれを間髪入れずに英語にして伝える必要があります。リスニングの方でいうと、英語ドラマの流し見の様に 7 割くらい聴ければ十分楽しめるのとは違って、逐次正しく伝わる日本語にしないといけないので、得意なリスニングでも集中力はものすごい必要ですし(日本語力も試されますw)、反対にスピーキングの方は瞬間英作文をやり続ける感じになります。

英会話教室ももちろん両方鍛えるわけですが、単位時間辺りの効率でいうと逐次通訳の方が圧倒的に濃厚ですし、人の役にも立てるのでやる気もマックスです。

逐次通訳する時の脳の使い方

これは通訳する人それぞれだと思いますが、僕が逐次通訳してる時に感じてるのは、とにかく余計なことを考えない様にして脳の短期記憶容量の空きを増やしておいて、話された内容を聴きながらそのスタックに積んで(そのまま積むというよりは、訳す前段階の中間言語の様な形で記憶してる感覚)、訳す時にはスタックから取り出しながら最終的な訳文に処理している様に感じています。僕は逐次通訳してるときは本当に他に何もできなくて、メモを取るために手や目を動かす余裕もないです2。日本語と英語はよく言われる様に語順が逆なことが多いので、僕はスタックのイメージが特に強いです。

僕より全然通訳上手な @ijin さんはもっとストリーム処理する感覚みたいです。この辺はもうちょっとちゃんと訓練すればもっと上手くなる気はするけど、それで食っていくわけではないので今のところは現状維持かな。。。

なお、同時通訳をされてる方々が一体どんな脳の使い方をしているのかは非常に興味がありますね。。。

まとめ

逐次通訳は、ある程度英語ができて伸び悩んでいる人にとって絶好のスキルアップの機会だと僕は思います。もし、通訳できるチャンスがあればぜひ腕試ししてみることをおすすめします。日常会話ができていて、自分の専門領域の話題についての通訳であれば、意外と何とかなると思います。

もちろん、僕もまだまだ鍛えていきたいので、日英の逐次通訳のお仕事があれば、ぜひご依頼下さい。今回オンラインで初めてやりましたが何とかなることが分かった3ので、日本での開催にオンラインで入ることも可能です。

今回貴重な機会を提供して頂いた、ServerlessDays Tokyo 2022 の主催者の方々、および Momento の皆さんには感謝です!

Footnotes

  1. これを昔の同僚は「目黒英会話学校」と呼んでいました。(日本の Amazon は目黒にオフィスがあります。)

  2. 前職の同僚には別の仕事をしながら逐次通訳できるような人もいて、途方もないなと思いました。

  3. ちなみに、今回の逐次通訳は当日に依頼されたので中々タフでしたが、それでも何とかなることが分かりましたw